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リモートワークの「息苦しさ」はどこから来るのか――監視ではなく、頑張りを認める組織へ

休憩のたびに報告を求める、チャットの返信が数分遅れただけで「今、何してる?」と確認する、孤独にさせないつもりで1時間おきに声をかける――リモートワークの現場で、良かれと思って始めたルールや声掛けが、メンバーにとっては「監視」や「作業の邪魔」になっていることがあります。相手の姿が見えない環境では、管理する側の不安が、そのまま息苦しさとしてメンバーに伝わってしまうことがあります。

本コラムでは、日本ハラスメントリスク管理協会の知見をもとに、リモートワークにおける「息苦しさ」の正体と改善のポイントを整理します。 そのうえで後半は、foxcale独自の視点から新たな組織づくりについて考えます。「監視」するのではなく、一人ひとりの「頑張りを認める」ことで心理的安全性と生産性をどう両立させるのか。当社の取り組みから得た知見を交えてお伝えします。

リモートワーク中のコミュニケーション、上手くいっていますか?

(※本セクションは、日本ハラスメントリスク管理協会 執筆コラムに基づき構成しています)

働き方の多様化が進み、リモートワークを取り入れる企業が多くなりました。通勤時間の削減や集中環境の確保といったメリットがある一方で、対面ではないからこその「難しさ」に直面しているチームも多く見られます。

良かれと思って始めたルールや声掛けが、実はメンバーの負担になっているケースがあります。ここでは、リモートワークにおけるチームワークのあり方と、その裏に潜む「息苦しさ」の正体について、人事・管理職の視点から考えていきます。

「見えない不安」が生む過剰な監視とプレッシャー

  • 管理のつもりが「監視」に変わるとき

相手の姿が見えないリモート環境では、上司が「部下がサボっているのではないか」という疑念を抱き、過度な管理に走ってしまうことがあります。

具体的には、休憩のたびに報告を求めたり、離席のたびにチャットで報告させたりするケースです。クライアント対応などの業務でチャットの返信が数分遅れただけでも、即座に「今、何してる?」と疑うようなコミュニケーションは、メンバーに常に「監視されている」という恐怖心を与えます。

  • 常に「即レス」を強要される緊張感

こうした環境下では、メンバーは「すぐにリアクションしないと、サボっていると思われる」という強迫観念に駆られます。本来、集中して取り組むべき業務中であっても、チャットの通知音が鳴るたびに手が止まり、思考が中断されてしまいます。

結果として生産性は低下し、自宅というリラックスできるはずの空間が、オフィス以上に「息が詰まる」場所に変わってしまいます。自宅が気の抜けない場所になってしまえば、転職を考える人も増えていきます。

「配慮」が裏目に出る、過剰な声掛けの落とし穴

  • チャットの頻度・回数が多い方が良いという勘違い

リモートワークの課題として「孤独感」がよく挙げられます。リーダー側もそれを危惧し、「孤独感を感じさせないよう、こまめに声をかけてあげよう」と意識するのは自然なことです。

しかし、その手法が「チャットで頻繁に声をかける」ことに終始してしまうと、逆効果になる場合があります。作業の進捗を1時間おきに確認したり、雑談のつもりで脈絡のないメッセージを送り続けたりすることは、受け手にとっては「作業の邪魔」になってしまいます。

  • 返信することが業務になってしまう

皮肉なことに、表面的なコミュニケーションが多すぎると、メンバーは「また返信しなければならない」という負担を感じ、当たり障りのない返答で場を凌ごうとします。その結果、かえってメンバーのメンタル面の不調や悩みに気づくのが遅れる原因になります。

環境改善のポイント

リモートワークにおける息苦しさを解消し、健全なチームワークを築くために、次の3つの対策を提案します。人事・管理職として、チームの息苦しさを解消する環境を整えていきましょう。

  • 「成果」と「時間」を切り離して評価する

「今何をしているか」を時間単位で追うのではなく、期日までの成果で評価する文化を作ります。これにより、過度な点呼や報告の必要性がなくなります。

  • 緊急度に応じた連絡体制

「チャットは即レス必須ではなく、30分以内に返そう」「1時間経ってコメントがなかったら、もう一度声をかけよう」など、コミュニケーションのタイミングについて共通の認識を持っておきます。急ぎの場合は電話、または至急用のチャットスペースを分けて運用するなど、緊急度に応じた使い分けをルール化することで、メンバーはプレッシャーから解放されます。

  • 「中身のある」コミュニケーションの機会を作る

頻繁なチャットの代わりに、週に1回15分程度の1on1(個別面談)を設け、そこでお互いの状況やメンタル面をじっくり話し合う時間を確保することも良いでしょう。日常のノイズを減らすことで、本当に困ったときに「相談しやすい」関係性が構築されます。

リモートワークにおいては「コミュニケーションの量」ではなく、お互いのプロ意識を尊重する「コミュニケーションのメリハリ」を重視することが大切です。過剰な管理でも放任でもなく、お互いに安心して取り組める環境を整えることが、チームのパフォーマンスを最大化させる道になります。


「監視」ではなく「認める」へ――リモートワークが定着した時代の組織づくり

(※本セクションは、当社の知見に基づく考察・解説です)

ここまでは、リモートワークでのコミュニケーションの息苦しさと、その改善のポイントを見てきました。ここからは、この問題をチーム内のルールづくりで終わらせず、会社としてどんな組織をつくるべきかという視点で考えます。

リモートワークは、すでに「当たり前の働き方」である

出社回帰の動きもありますが、リモートワークはすでに働き方として定着しています。育児や介護との両立、住む場所にとらわれない採用、集中できる時間の確保など、リモートワークが可能にしたことは多くあります。働き方の選択肢がない会社は、人材の獲得と定着で不利になりつつあります。

企業に求められているのは、リモートワークを続けるか出社に戻すかの二者択一ではありません。リモートワーク制度を運用しながら、心理的安全性と生産性の両方が高い組織をつくること。それが、これからの企業に共通する課題だと言えます。

見えなくなったのは「サボり」ではなく「頑張り」

前半で見たように、リモートワークにおける息苦しさの根には、管理する側の「見えない不安」があります。この不安に対して、多くの会社が選んでしまうのが「監視」です。稼働状況を細かく報告させる、PCの操作ログを取る、常時カメラをオンにさせる。こうした対応は一時的な安心を管理側に与えますが、メンバーからは信頼を奪い、生産性と定着率の双方を損ねます。

ここで視点を変えてみたいと思います。リモートワークによって会社から見えなくなったものは、本当に「サボり」でしょうか。

オフィスでは、自然に目に入っていたものがあります。困っている同僚に声をかけて助けている姿、地味だが誰かがやらなければならない作業を黙って引き受けている姿、他部署からの相談に時間を割いている姿。こうした「成果として数字に表れにくい頑張り」は、同じ空間にいれば管理職の視野に入り、評価や声掛けにつながっていました。リモートワークで失われたのは、むしろこちらです。

見えなくなった頑張りは、認められません。認められない頑張りは、やがて続かなくなります。そして、頑張りが見えないまま成果だけで判断されると、評価は偏り、「自分はちゃんと見てもらえているのか」という不安が、孤独感として蓄積していきます。

リモートワーク制度を運用しながら会社の競争力を高めていくために必要なのは、従業員を監視することではなく、個々の従業員の頑張りと成果を会社がきちんと認識し、それを伸ばしていくことです。「見られている」という恐怖ではなく、「見てもらえている」という安心が、人の力を引き出します。

当社の実践――コミュニケーションデータと業務データから、一人ひとりの「頑張り」を捉える”fairscope”

当社では、こうした「見えない頑張り」を、人の感覚に頼らず事実に基づいて定点的に確認できる仕組みづくりを目指して参りました。

現在開発中のHRインテリジェンスサービス「fairscope」の社内PoC(概念実証)として、Slackのやり取り、Notionのドキュメント、GitHubの開発履歴などをまとめて分析したところ、次のようなことが見えてきました。

  • 周囲の質問によく答え、チームの相談役になっているメンバー

  • 資料を整えて、無駄なやり取りを減らしている人

  • 同じ作業で何度もつまずいている状況

こうした事実をもとに、マネジメントは感覚に頼らず、ファクトに基づいて「頑張りを認める」ことと「困りごとを早期に支援する」ことの両方を実践できます。そこで実感したのは、「自分の頑張りが認識されている」という安心感が組織のパフォーマンスを大きく改善するということです。数字に表れにくい貢献が認められると、メンバーは人を助けることや地味な作業を引き受けることをためらわなくなります。困りごとに早く気づければ一人で抱え込む時間が減り、問題が大きくなる前に手を打てます。

「見えない」という条件に対して、「頑張りを見つけて認める」という対処を選べば、リモートワークは心理的安全性と生産性を両立させる働き方になります。

なお、データを活用する際は、その目的をはっきりさせておくことが大切です。この取り組みの目的は、従業員を監視することではなく、一人ひとりの貢献を把握し、必要な支援につなげることにあります。目的と前提を共有したうえで活用することで、データは信頼を支える土台になります。そのため当社では、”fairscope”導入時には、お客様の社内において組織へ展開するにあたり従業員の方への説明や合意形成から共に取り組んでおります。
fairscopeにご興味をお持ちいただけましたら、ページ下部のバナーよりお問い合わせをお待ちしております。

結びに

リモートワークの息苦しさは、見えないことそのものではなく、見えないことへの対処として「監視」を選ぶことから生まれます。同じ条件でも、「頑張りを見つけて認める」ことを選べば、リモートワークは心理的安全性と生産性を両立できる働き方になります。

御社の組織では今、誰かの頑張りが見えないまま埋もれていないでしょうか。その問いに向き合うところから、次の一歩が始まります。

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山郷 政史
山郷 政史
株式会社SIHM 代表取締役 大学卒業後、高齢者介護や障がい者支援の現場で働き、サービスの質・組織力向上・個人のキャリア形成のために人材育成の重要性を知る。その後、教育研修団体に入社、全国で登壇するとともに後進の講師育成に関わる。2013年より、大手介護グループ企業にて新規事業として研修サービスの開発に関わる。オフライン・オンライン・オンデマンドのブレンデッドラーニングの提供を通して、全国の人材育成を支援した。2025年に株式会社SIHMを設立。研修講師として全国で活動中。これまでの累計登壇は約1,200回、延べ受講者数は約80,000人。
日本ハラスメントリスク管理協会

一般社団法人 日本ハラスメントリスク管理協会

https://harassment-rma.jp/

「ハラスメントを解消し、品性のある組織づくりを目指す」を理念に掲げる一般社団法人です。企業のハラスメント対策や、ハラスメントを組織内から予防するための専門家(講師・相談員)の育成、各種教育・研修などを提供しています。

fairscope コンセプト

fairscope(フェアスコープ)

fairscopeは、メールやチャットなどの日常のコミュニケーションデータをAIで解析し、組織の状態を可視化するHRインテリジェンスサービスです。

誰がチームを支えているのか、どこに困りごとが集まっているのかといった、成果物や稼働時間だけでは見えない組織の実態を定点的に確認し、対話を始めるべき場所への「気づき」を提供します。現在、有償PoC(概念実証)のお申し込みを受け付けています。

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